ヤングスターFILE:ジャンフィリップ・マテタ(マインツ)
ブンデスリーガの有望な若手選手を紹介する「ヤングスターFILE」。第13回はマインツで二桁得点を達成したストライカー、ジャンフィリップ・マテタに注目!
ブンデスリーガに在籍するフランス人プレーヤーの数は、10年前の2008/09シーズン時点で10人に満たなかった。それが現在はフランク・リベリー(バイエルン・ミュンヘン)やセバスティアン・アレ(アイントラハト・フランクフルト)を筆頭に、キングスレイ・コマン(バイエルン)、イブラヒマ・コナテ(ライプツィヒ)、ベンジャミン・パバール(シュトゥットガルト)ら才能豊かな若手が次々と参戦。今やその数は20人を超え、“フランス・ブランド”はリーグの一大勢力となった。
そんな多士済々のフランス人がそろう中で、第28節に最も輝きを放ったのがマインツのジャンフィリップ・マテタだった。フライブルク戦でキャリア初のハットトリックを達成し、チームの連敗を4で止めると同時に自身のシーズン得点数を二桁の大台に乗せた。21歳の若きストライカーは今、マインツのファンを文字どおり虜にしている。
192センチの上背が何より目を引くが、ほんの少し前まではドイツのサッカーファンに知られた存在ではなかった。母国の強豪リヨンに籍を置いていたものの、昨季は期限付き移籍先の2部ルアーブルでプレー。そこでリーグ2位タイの17ゴールを挙げてマインツのスカウト網にかかったが、トップリーグでのプレー経験はほとんどない。ドイツにやって来た当初は、「ニューカッスルに移籍した武藤嘉紀の穴を埋められる人材なのか」という懐疑的な声も聞かれた。
しかし、マインツのスカウトの目は正しかった。シーズン序盤にして1トップのレギュラーに定着すると、巨体を生かしたポストプレーと力強いドリブル、左右両足から放つ豪快なフィニッシュで攻撃陣をけん引している。単独でシュートまで持ち込む力を持つマテタは、攻撃のバリエーションが決して豊富とは言えないマインツで瞬く間に不可欠な選手になった。
恵まれたフィジカルや身体能力だけに頼らず、頭もしっかり働かせている。オフ・ザ・ボールの際にマーカーとの駆け引きを欠かさず、ゴール前ではいかにもフィニッシャーらしい動き直しでクロスやラストパスに合わせる。ダイナミックでありながら、緻密さも兼ね備えるのは大きな特徴だろう。
お気に入りの選手は元スウェーデン代表FWのズラタン・イブラヒモヴィッチで、コーナーフラッグを蹴り飛ばすゴールセレブレーションも彼を模したものだという。ブンデスリーガ初挑戦にして二桁得点と、まずはドイツで理想的なスタートを切った。雲衝くばかりの大型ストライカーは、憧れの名手のような“どデカい”キャリアを築くためにまい進している。
文=遠藤孝輔
【ヤングスターFILE】
Vol.1:ドディ・ルケバキオ(デュッセルドルフ)
Vol.2:ルカ・ヨヴィッチ(フランクフルト)
Vol.3:フローリアン・ノイハウス(ボルシアMG)
Vol.4:ダヨ・ウパメカノ(ライプツィヒ)
Vol.5:ジャンフィリップ・ジュバマン(マインツ)
Vol.6:マクシミリアン・エゲシュタイン(ブレーメン)
Vol.7:アレクサンダー・ニューベル(シャルケ)
Vol.8:ジョエリントン(ホッフェンハイム)
Vol.9:アルフォンソ・デイビス(バイエルン)
Vol.10:タイラー・アダムズ(ライプツィヒ)
Vol.11:ユリアン・ブラント(レーバークーゼン)
Vol.12:ニクラス・ズューレ(バイエルン)