浅野拓磨はアーセナルからの期限付き移籍でシュトゥットガルトに2シーズン在籍した。 - © Eibner-Pressefoto/Alexander Neis
浅野拓磨はアーセナルからの期限付き移籍でシュトゥットガルトに2シーズン在籍した。 - © Eibner-Pressefoto/Alexander Neis
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シュトゥットガルトと日本人選手の歴史

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日本との繋がりの強いシュトゥットガルトでは、これまで7人の日本人選手たちが公式戦に出場している。

28日に行われた京都サンガF.C.戦で、VfBシュトゥットガルトのセバスティアン・ヘーネス監督は61分に他の若手選手たちとともにチェイス・アンリをピッチに送り込んだ。堂々としたプレーを披露した20歳の日本人センターバックは昨季後半からコンスタントにブンデスリーガでベンチ入りを果たしており、今季はいよいよ公式戦デビューが期待される。出場を果たせば、シュトゥットガルトの日本人選手としては実に8人目となる。

1893年創立の伝統的なクラブに最初の日本人選手がやって来たのは2011年、清水エスパルスから岡崎慎司を獲得した時だった。後に日本サッカー界のレジェンドとなるストライカーは主にサイドで起用されたが、持ち味の献身的なプレーで1部残留を目指すチームに貢献。初年度はシーズン終盤に2得点を挙げるなど、ヨーロッパで上々のスタートを切った。チームとドイツのサッカーににさらに適応した2011/12シーズンは調子を上げてブンデスリーガ26試合で7得点を記録する活躍を見せるなど、マインツに移籍するまでの2年半でリーグ戦63試合10得点の数字を残し、後に続く日本人選手たちへの道を切り開いた。 

遠藤航はキャプテンも務めるなど、レジェンドとしてクラブの歴史に名を残す活躍を見せた。 - IMAGO/Frank Hoermann / SVEN SIMON/IMAGO/Sven Simon

実際に岡崎獲得の1年後にはアルビレックス新潟から当時20歳の酒井高徳が加入、すぐにレギュラーに定着した。両サイドでプレーできる柔軟性も重宝され、ハンブルガーSVに移った2015年までの3年半でブンデスリーガ87試合に出場し1ゴールを挙げた。2016年にブンデスリーガ2部に降格したシュトゥットガルトは、その夏に既にアウクスブルク、レバークーゼン、ヘルタ・ベルリンでプレーしドイツでの経験が豊富な細貝萌を補強したが、怪我もありリーグ戦の出場は10試合にとどまった。

細貝加入の1か月後には、もう一人の日本人選手として浅野琢磨が加入。 その夏にサンフレッチェ広島からプレミアリーグのアーセナルに移籍したストライカーはイングランドでの労働許可が下りず、期限付き移籍でドイツでプレーすることになった。ウィングや攻撃的ミッドフィールダーとして起用されながらも、第11節のカールスルーエ戦での初ゴールを含め4ゴールを記録するなどリーグ戦計26試合に出場しコンスタントに活躍し、チームの昇格に貢献した。翌シーズンも期限付き移籍を延長してブンデスリーガデビューを果たし、第13節のハノーファー戦で初ゴールも挙げたが、シーズン後半戦は出番を失うなど15試合の出場にとどまりチームを去った。 

シュトゥットガルトに通算5人目の日本人選手がやってきたのは、その1年後。再びブンデスリーガ2部への降格を余儀なくされたチームはベルギーのシント=トロイデンで活躍していた遠藤航を獲得した。リーグ戦の出場は11月まで待たなければならなかったが、いったん出場機会を得ると守備的ミッドフィールダーとして定位置を掴み、持ち前のボール奪取能力と巧みなパス供給を活かして一気にチームの主軸へと成長した。

伊藤洋輝はシュトゥットガルトで大きな成長を遂げ、ブンデスリーガ屈指のディフェンダーに。 - IMAGO/Julia Rahn/IMAGO/Pressefoto Baumann

チームとともに1部に昇格した翌シーズンもその勢いは衰えず、リーグ1位のデュエル勝利数を記録するなど中盤に君臨。ブンデスリーガ屈指のミッドフィールダーとしての地位を築いた。2021/22シーズンからはキャプテンも任され、そのシーズンのケルンとの最終節ではそのままなら2部降格が決まる後半アディショナルタイムに、コーナーキックからのボールを頭で押し込んで決勝ゴール。文字通りチームを救う活躍でクラブのヒーローとなった。 

そしてその劇的なゴールをアシストしたのが、前年の夏にジュビロ磐田からやってきた通算6人目の日本人選手、伊藤洋輝だ。それまでシュトゥットガルトに獲得してきた日本人選手が日本のトップリーグで実績を残していたのに対し、当時22歳の伊藤はJ2でプレーしており日本でも知名度が高いとはいえない存在だった。当初はまずセカンドチームでプレーする予定だったが、その安定感のあるディフェンスとビルドアップが評価されすぐにトップチームに合流。レギュラーの座を掴んだ後も大きな成長を遂げ、ブンデスリーガの中でも目を引く存在となっていった。

チームが低迷に苦しんでいた2023年1月には降格回避のための即戦力として、ドイツでの経験が豊富な原口元気がウニオン・ベルリンから加入。シーズン後半戦だけで11試合に出場し2アシストを記録するなど、チームの1部残留に貢献した。日本人選手が多く活躍してきたブンデスリーガでも、日本人選手が3人同時に在籍し活躍するのは異例のことだった。

遠藤は昨年夏にプレミアリーグのリヴァプール、伊藤は今夏バイエルンへとステップアップを果たし、昨季出場機会を得られなかった原口元気は契約満了で退団した。しかし2年前に高卒でセカンドチームに加わったチェイス・アンリは、シュトゥットガルトの地で成長を続けてブンデスリーガでコンスタントにベンチ入りするまでになった。クラブ通算8人目の日本人選手が公式戦のピッチに立つ日は遠くなさそうだ。