シュトゥットガルトを躍進に導いたセバスティアン・ヘーネス監督。 - © Alex Grimm
シュトゥットガルトを躍進に導いたセバスティアン・ヘーネス監督。 - © Alex Grimm
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16位から2位に躍進!シュトゥットガルトの歴史的な23/24シーズン

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2部降格間際だったシュトゥットガルトはヘーネス監督の就任後に変身し、大躍進を実現した。

夢のような2023/24シーズンを過ごしたブンデスリーガのクラブはどこかと聞かれたら、多くの人は他を寄せ付けない圧倒的な力で無敗のまま初優勝を果たしたレヴァークーゼンを挙げるだろう。しかしもう一つ、シーズン前の予想を大きく上回る快進撃を見せたチームがある。今月来日し京都サンガF.C.、サンフレッチェ広島と親善試合を行うVfBシュトゥットガルトだ。

シュトゥットガルトとバイエルンで活躍した父、ワールドカップ王者でありバイエルンの会長を務めた叔父を持つドイツサッカー界のサラブレッドである当時40歳のセバスティアン・ヘーネスが監督に就任した2023年4月、シュトゥットガルトが置かれていた状況は1年後とはまったく異なるものだった。得点源のセール・ギラシが怪我により2か月間離脱していたとはいえ、遠藤航や伊藤洋輝、現ドイツ代表のヴァルデマール・アントン、クリス・フューリッヒら実力者を揃えながらも不振を極めるチームは16位に低迷し、ブンデスリーガ2部降格の危機に瀕していた。

ブルーノ・ラッバディアの後を継いだ新指揮官の初戦は、DFBポカール準々決勝のニュルンベルク戦。2部チームとのアウェイでの一発勝負を終盤のエンゾ・ミローの決勝ゴールで制したチームはその4日後、残留争いの直接のライバルであるボーフム戦を伊藤洋輝、セール・ギラシ、ヨシュア・ヴァクノマンのゴールで3-2で撃破。必要だった結果を出したことで、がらりと流れを変えてみせた。その後のリーグ戦7試合をわずか1敗(2勝4分け)で乗り切った新生シュトゥットガルトは自動降格を回避すると、2部3位のハンブルガーSV相手の入れ替え戦で連勝を収めて無事1部残留の目標を達成した。 

ギラシは昨季28試合で28得点の大活躍を見せた。 - Christian Kaspar-Bartke/Bundesliga

そしていい流れで迎えた2023/24シーズンは、ファンの期待さえ上回る躍進の1年となった。ギリシャ代表のコンスタンティノス・マヴロパノス、クロアチア代表のボルナ・ソサ、そして開幕直前には主将の遠藤航を失いながらも、ヘルタ・ベルリンからマクシミリアン・ミッテルシュテットを獲得しバイエルンからアレクサンダー・ニューベル、ブライトンからデニズ・ウンダフを期限付き移籍で迎えるなどピンポイントで補強に成功。開幕戦でボーフムを相手に5-0の快勝を収めて最高のスタートを切ると、ブンデスリーガ最初の8試合で7勝を収める快進撃を見せた。

各ポジションの選手が躍動する中でも、特筆すべき活躍を披露したのはセール・ギラシだった。開幕戦の2得点を皮切りに、第4節マインツ戦と第7節ヴォルフスブルクでハットトリックを達成するなど、開幕からの8試合で14ゴールを挙げる大爆発を見せた。怪我による離脱もありながらもその勢いはシーズンを通して衰えず、得点王の座こそハリー・ケインに譲ったが最終的には28試合で28得点を決めて絶対的エースとしての仕事を全うした。 

ブレイクを果たしたのはギラシだけではない。デニズ・ウンダフは、ベンチスタートが多かったシーズン序盤に少ない出場機会で結果を出し続けてスタメンに昇格。ギラシの相棒として18得点10アシストを記録した。

伊藤洋輝とともに守備陣を支えたヴァルデマール・アントン、左サイドを切り裂き多くのチャンスを演出したクリス・フューリッヒ、そして新加入ながら左サイドバックとして抜群の安定感を披露したマクシミリアン・ミッテルシュテットもそのパフォーマンスをユリアン・ナーゲルスマンに高く評価され、2023/24シーズン中にウンダフと共にドイツ代表デビューを飾った。

シーズン後半戦の最初の2試合で連敗を喫し失速するかと思われた1月も、ライプツィヒに5-2で快勝して嫌な流れをストップ。その後ブンデスリーガでは1敗しか許さず最後はバイエルンを抜き去って、優勝した2006/07シーズン以来最高となる2位でフィニッシュした。15年ぶりにUEFAチャンピオンズリーグ出場権を獲得、さらに勝ち点73は優勝シーズンを上回りクラブ史上最多という、文字通り歴史的な躍進を遂げたシーズンとなった。