宇佐美貴史
宇佐美貴史 - © 2018 DFL
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宇佐美「このクラブでプレーすることが今の自分にとって一番必要なこと」

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フォルトゥナ・デュッセルドルフが、6年ぶりにブンデスリーガに帰ってきた。2部優勝という最高の結果を出した昨シーズンは、宇佐美貴史にとってもドイツで経験した最高のシーズンとなり、ワールドカップ・ロシア大会出場の切符も手にした。ここを自分の居場所と熱望した通り、デュッセルドルフで2年目を迎えることとなった宇佐美に、デュッセルドルフへの想いや、通算5年目となるブンデスリーガでの挑戦、彼のサッカー人生について語ってもらった。

ーー昨シーズン、2部優勝セレモニーの時にフォルトナ・デュッセルドルフに帰ってくることをサポーターと約束していました。それほどまでにこのチームを愛する理由、このチームの魅力について教えてください。

宇佐美 チームメイトもフロント・スタッフも全員がすごくフレンドリーに接してくれるんです。チームに関わっている人たちがみんな本当にいい人たちで、サポートもしっかりしてくれる。もちろん、応援してくれるファンの熱意というのがすごいクラブだなということも思っています。昨シーズン、何試合か勝ててない時も、常にサポートしていくという姿勢を向こうから打ち出してくれたんです。こういうクラブでプレーすることが今の自分にとって一番必要なことだと感じています。

ーー今シーズンの宇佐美選手の目標は何ですか?

宇佐美 試合に出て、ゴールにしてもアシストにしてもたくさんの結果を残したいです。チームが残留することが今シーズンの目標、その目標に向けて少しでも貢献できるように個人としても取り組んでいきたいと思っています。

ーーフンケル監督はこれまでも高原選手、稲本選手、乾選手、大迫選手など多くの日本人選手を指導してきました。宇佐美選手から見たフンケル監督の印象は?

宇佐美 本当に選手の一挙手一投足、ボディラングエージも含めて全てを見ている監督だなと思います。練習中に声を荒げたり、練習をリードして指導するタイプではないと思いますね。そこは信頼しているコーチに任せ、自分は選手たちがどういうモチベーションやコンディションでプレーしているかを見極めようとしているっていう感じです。

本当に毎回の練習で気が抜けない。でも、練習で良いプレーやモチベーションをアピールすると、すぐに試合で使ってもらえたりするので、分かりやすい監督だなと思います。

フンケル監督 - 2018 Getty Images / Maja Hitij

ーー昨シーズン一緒に戦った原口元気選手についても教えてください。原口選手は宇佐美選手にとってどのような人物ですか? また、原口選手からどのような影響を受けましたか?

宇佐美 プレーヤーとしては、もちろんもう言うまでもないと思いますね。いい選手ですし、サイドをドリブルで切り裂いたり、攻守にチームに貢献できる選手。彼が(デュッセルドルフに)来て、両サイドで出るようになってからすごく良い影響をチームに与えらるようになったと思っています。昨シーズンは最後、本当に二人でチームをリードしていっているような感覚があったので、すごく楽しかったですね!

ーー日本からドイツへの最初の移籍、バイエルンホッフェンハイムでの経験について振り返った時、宇佐美選手にとって、この期間の挑戦はどのようなものだったのでしょうか。

宇佐美 そこで大きく失敗し、大きく挫折できたことっていうのが、自分のサッカー人生、また自分の人生に、すごく良い影響を与えてくれたと思っています。

その後、一度日本に帰りましたが、いつかまた絶対にドイツに帰ってくるぞという決意を持って帰りました。そういう決意を持たせてくれたバイエルンとホッフェンハイムでの挑戦だったと思いますし、そこで無力さというか、自分のプレーヤーとしての価値の低さっていうのを痛感できたことが、すごく、僕にとっては大きかった。本当にいい経験をさせてもらえたなと思います。

- Christof Koepsel/Bongarts/Getty Images

ーーガンバ大阪に復帰した後、再びブンデスリーガへの移籍(アウクスブルク)を決意されました。二度目のチャレンジは、最初のチャレンジとどのように違っていましたか?

宇佐美 そうですね。一番最初に海外生活、海外挑戦をスタートさせたバイエルンの頃と比べれば、言葉もその2年でだいぶ覚えていましたし、日本にいた間(約3年)にドイツ語が抜け切ることもなかったので、ある程度は通訳も必要ないという状況からスタートできました。それにドイツでの生活の感じもしっかり分かった上でドイツに渡ってきたので、少し余裕もありました。純粋に再挑戦が始まるっていう感じで、一回目とは全く違いました。

ーー宇佐美選手がブンデスリーガで対戦した中で、この選手はすごい! と衝撃を受けたような選手はいますか?

宇佐美 ロイスじゃないですかね。マルコ・ロイス! 自分がバイエルンにいた時、まだ彼はボルシアMGにいて、「こんなすごい選手がいるんだ!」って、試合を見て痛感させられました。

ーーロシアで開催されたワールドカップ(W杯)で初出場を果たされました。今シーズン、ブンデスリーガでプレーする上でその経験をどう活かしていきたいですか?

宇佐美 W杯は、ブンデスリーガとはまた違う空気。ブンデスリーガのプレッシャーもありますけど、W杯で経験できるプレッシャーっていうのは、もう計り知れないものがありました。W杯での出場時間は短かったですけど、そういったものを経験できたということをチームに還元していきたいと思っていますし、W杯という舞台で感じた世界のレベルを忘れることなく、そういう意識で練習に取り組むことによって、良いものをチームに与えていかなければならないという気持ちになりました。

ーー日本のサッカー選手にとって、香川真司選手はロールモデル(お手本)としてどれほど重要な存在だと思いますか?

宇佐美 今これだけドイツのブンデスリーガに日本人選手がいるっていう状況。これは、完全に真司君がその道を開いてくれたと思います。もちろんそれが全てではないですけど、真司君がドルトムントで活躍したことによって、「お、日本人選手って結構やれるんだな」っていうことを、ドイツ全土に見せつけるっていうことをしてくれて、そこから裾野が広がって僕ら若手選手がどんどんチャレンジできるようになったと思います。ブンデスリーガにおける日本人選手の成長とか、日本人選手がプレーできている現状は、真司君が最初に作り上げていってくれたものが大きく影響していると思います。

ーー昨今の日本におけるブンデスリーガの地位、人気については、どのように感じていますか?

宇佐美 日本からの注目度は、どのリーグよりも高いと思います。日本人選手を応援してくださる日本のファンも多くいらっしゃるので、毎節かなりの確実で日本人対決があるっていうのも魅了的だと思いますし、ブンデスリーガは2部も見所が多いです。

ーー宇佐美選手はどのようにサッカーと出会ったんですか? サッカーを始めたきっかけや、思い出はありますか?

宇佐美 お兄ちゃんが二人ともサッカーをしていたので、立つようになってからすぐボールを蹴ったらしく・・・。僕はもちろん覚えていないんですけど、お兄ちゃん達が蹴っているのを見て、真似して自然とボールを蹴るようになった。だからいつからサッカーを始めたのか、始めたきっかけについて僕自身には記憶がないんです。それくらい小さい頃からボールを蹴っている。思い出は、もう遊びでやっていた時も、小学校、中学校も、今に続く全てがいい思い出です。

ーー宇佐美選手がサッカーの才能を自覚し、プロのサッカー選手になるんだと意識したのはいつですか?

宇佐美 小学校の時ですね。小学生の頃にはもう、自分がプロになれるということは分かっていました。根拠のない自信があったというか。プロのサッカー選手になってからどうしようか、ということは考えていましたけど、「プロのサッカー選手になる」ということが目標ではなかったですね。根拠のない自信には、すごいパワーがあるなと思います。

ーープロのサッカー選手としての道のりの中で、サポートしてくれた人物は誰ですか?

宇佐美 ガンバ大阪の下部組織に入っていたんですけど、そこで中・高と指導してくれた人たちの存在は大きく、もう感謝しかない大切な人たちです。

そして、最初にサッカーに触れた小学校の時、技術面もそうですけど、サッカーとは何かっていうことを教えてくれたのが小学校の時の監督。今もたまに連絡をくれたりするんですけど、その人が一番最初にサッカーの楽しさを教えてくれた人ですね。

ーー最近、よく連絡を取り合っている選手は誰ですか?

宇佐美 フュルト(ブンデスリーガ2部)に来た井手口です。彼は今すごく苦しんでいて、イングランド2部やスペイン2部を経験し、リーズ(イングランド2部)で戦力外のような扱いを受けた時も、連絡を取り合っていました。井手口に今回の移籍の話が来た時は、ブンデスリーガ2部がどんなリーグか、どういうチームが強いか、どういうサッカーをするかを伝えることができました。

僕が最初の海外挑戦で失敗したこと、苦労したことを、彼も体験していて、でも必ずそこを抜けて成長し、超えていける選手だと思います。彼はガンバ大阪、中学、高校とずっと同じ道を辿ってきた後輩、だからこそ、なんとかしてここを乗り越えて欲しいです。

ーーデュッセルドルフの街でおすすめの場所があれば教えてください。

宇佐美 (ドイツの人にお勧めするなら)インマーマン通りですね。この通りには、日本の全てがあります。日本食も味わえますし、日本人もたくさんいます。ドイツで日本を堪能できる場所。日本に興味がある人は、是非インマーマン通りとオスト通りに行ってみてください。僕もよくいるんで(笑)。

※インタビューは8月28日に行いました。