ブンデスリーガ挑戦記:フランス編
ブンデスリーガの歴史を彩ってきた外国籍プレーヤーの系譜を紐解く当連載。第8回はフランスにスポットライトを当てる。
ここ10年のブンデスリーガにおいて最も存在感を強めたのがフランス国籍選手だ。2009/10シーズンにはわずか8人の在籍だったのが、現在は26人と“勢力”は3倍以上に拡大した。参戦1年目のリュカ・エルナンデス(バイエルン・ミュンヘン)やマルクス・テュラム(ボルシアMG)から最古参のジョナタン・シュミッド(フライブルク)まで、バラエティーに富んだプレーヤーがドイツサッカー界を彩っている。
このブームと関係なく、以前から“フレンチコネクション”を有効活用してきたクラブもある。その代表格がバイエルンだ。ビセンテ・リザラズとウィリー・サニョルという伝説的な両サイドバックは、何度となくマイスターシャーレを掲げ、2001/02シーズンにはチャンピオンズリーグを制した。サニョルがフランス人歴代4位の184試合出場、リザラズは同5位の183試合出場という記録を残している。
そして、この二人を凌駕する実績を誇るのがフランク・リベリーだ。2007年夏に鳴り物入りでバイエルンに加入。273試合出場、86得点120アシストという成績はいずれもフランス人選手最多の金字塔だ。ブンデスリーガ優勝回数はオリバー・カーンの8回を上回る単独トップの9回。2012/13シーズンにはビッグイヤーも掲げている。
バイエルンには昨季までリベリーと同僚だったキングスレイ・コマンとコランタン・トリッソに加え、前述のリュカ・エルナンデスや、バンジャマン・パヴァール、ミケール・キュイザンスと、現在も数多くのフランス人選手が所属する。ちなみに、コマンはブンデスリーガ通算100試合出場まで残り「1」。達成すればフランス人では11人目の大台到達となる。
リベリーの時代が訪れる前にブンデスリーガの“主役”を張ったジョアン・ミクーの存在も忘れてはならない。天才的なパスセンスを誇った司令塔は、ブレーメン加入2年目の2003/04シーズンに国内二冠を達成。アイウトン&イヴァン・クラスニッチという破壊力抜群の2トップの持ち味を引き出しつつ、自らのゴールで数多くの勝利を手繰り寄せた。
ほかにも1960年代にシュトゥットガルトで活躍した“パイオニア”のジルベルト・グレス、2006/07シーズンにシュトゥットガルトでリーグ制覇を成し遂げたマテュー・デルピエール(フランス人歴代3位の185試合出場)、ブレーメンとバイエルンでマイスターシャーレを掲げたヴァレリアン・イスマエルなど往年の名手を挙げればキリがない。
1991年のバロンドール受賞者であるジャンピエール・パパン(バイエルン)や1998年のワールドカップ王者ユーリ・ジョルカエフ(カイザースラウテルン)といったスーパースターもブンデスリーガでプレーした。現役選手に彼らと肩を並べるほどのビッグネームはまだいないが、パヴァールやテュラム、ライプツィヒのダヨ・ウパメカノら若き逸材が、ドイツサッカーを明るく照らす存在になっているのは確かだろう。
文=遠藤孝輔